石田勝也税理士事務所

居場所が分からない相手に対して訴訟を起こすには、どうすればよい?

21.03.09
ビジネス【企業法務】
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会社を経営していると、取引先などと争いごとが起きることもあります。
何らかの紛争が起きた場合、訴訟での解決を余儀なくされることも多いでしょう。
訴訟の際には、裁判所が相手方に通知を出すため、その送り先をどこにするのかという問題が生じます。
事件によっては、相手方がどこにいるのか分からないことや、一切の連絡を拒否されることもあり得ます。
そのようなとき、裁判所でどのような手続きをするかについて説明します。
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訴訟をするには、被告の住所確認が必要

裁判所は、訴状等の訴訟資料の副本を、被告(訴訟の相手方)に交付しなくてはなりません。
このことを『送達』といいます。
これが完了して初めて裁判所で事件が取り扱われることになるため、送達は実務上とても重要な手続きとされています。
送達できないと訴訟ができないのです。

原則として、まずは『特別送達』(郵便での送達)をすることになるため、訴訟提起する場合には、被告の住所または本店所在地を確認する必要があります。
被告が法人であれば、法人の登記事項証明書を調査することで、本店所在地を知ることができます。
一方、被告が個人の場合、その住所が把握できていないことも少なくありません。

被告の住所が分からない場合や、被告が就業場所で受領する旨を申述している場合には、被告の就業場所に送達することもできます
これを『就業場所送達』といいます。
原則的にはあくまでも被告の住所地に送達することとされていますが、もし、住所が不明な場合に就業場所送達をするのであれば、後述するように調査を尽くす必要があることに注意しましょう。

なお、特別送達は、必ずしも被告が受け取らなくてはならないわけではありません
被告が不在であった場合に、従業員や同居者のうち書類の受領について相当のわきまえのある者がいれば、その者に対して書類を交付する方法で送達することができます。
これを『補充送達』といいます。
ただし、補充送達は、あくまで被告の住所地に送達した場合に限る制度で、就業場所送達には適用されません。


受領されない場合は、被告の居住状況の調査へ!

被告が受領せず、かつ再配達の依頼をしないために留置期間を超過してしまう場合には、普通の郵便と同様に、送付した書面が送達不能として裁判所に返却されることになります。
その場合には、『付郵便送達』という方法で送達することになります。
これは、裁判所が被告がいるであろう住所地に発送したことをもって送達がなされたものとみなされるものです。
被告が現に受領したかどうかにかかわらず送達の効力が生じるため、非常に強力な手続きです。
そのような強力な手続きだけに、被告が本当にその住所に在住しているかについて、原告側で複数回住所と思われる場所へ行き、ガス・電気メーターが動いているか、洗濯物や表札はあるか、郵便受け内の郵便物の状況に変化があるか、隣人による被告目撃情報があるかなどの調査を行う必要があります。
さらに、その調査内容について報告書を提出したり、休日配達指定郵便などで再度の送達を試みたりと、いくつかのハードルがありますが、裁判所と相談のうえ、確実に送達を行うことができます。


被告の住所が全く分からないときの最終手段

被告の住所が全く分からず、就業場所も不明である場合には、最終手段として『公示送達』という手段を用いることができます。
これは、裁判所の掲示場に訴訟提起されているため書類を取りに来るようにと呼びかけるもので、その掲示を始めた日から2週間を経過することで、送達を有効とするものです。

公示送達以外の手続であれば、被告の支配圏内に書類が届くため、被告は訴訟提起がなされている事実を知ることは不可能ではありません。
しかし、公示送達は、一般人が裁判所の掲示場を確認することはほぼないため、基本的に被告が訴訟の事実を知ることなく訴訟手続きが始まります。
当然、訴訟期日に被告は出頭しないまま、判決言い渡しを迎えるでしょう。

このような強力な手段を用いる際には、被告の住所について、調査を尽くしていることが必要になります。
たとえば、過去の住所から住民票をたどって現住所を調査し、判明している最後の住所地に足を運び、そこに被告が住んでいないことを確認したり、被告の関係者等に聴き取りを行うなどの調査を行います。
それらの結果、被告の現住所について判明しなかった旨の調査報告書を提出することが求められます。

裁判をする権利は憲法上の要請であるため、 “被告の住所が分からないから裁判できません”といったドライな制度にはなっていません。
しかし、被告の住所の調査は、被告の住民票の取得など弁護士にしかできないような行為も含まれています。
送達でつまずくことが予想される際には、一度専門家に相談したほうが得策かもしれません。


※本記事の記載内容は、2021年3月現在の法令・情報等に基づいています。