石田勝也税理士事務所

社内の不祥事を早期に発見するためのシステムの構築方法

20.05.26
ビジネス【企業法務】
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『従業員が会社の金銭を横領した』『取引先からキックバックを受け取っていた』など、社内の不祥事はいつでも起こり得る問題です。 
このような不祥事は、早期発見できれば大事に至らずに済みますが、発見できないまま不祥事が重なり、発覚したときには会社の財産が大幅に減少しているケースもあります。
最悪の場合、行政機関や報道機関に直接通報されてしまい、会社の名誉が大きく傷つけられることもあるでしょう。 
そのようなことにならないように今回は、取締役の立場から、不祥事を早期に発見するシステムを構築する方法について説明します。
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社内対応だけではむずかしい不祥事の発見

取締役には法令遵守義務、つまり、法令を守るべき義務があります。
そこから派生して、取締役会設置会社のうち大会社については法令を遵守するためのシステムである『内部統制システム』を構築する義務も生じます。
もっとも、中小企業に関しては、内部統制システムを構築しなくても違法ではありません。

内部統制システムの構築については、取締役会を置いている会社では取締役会が、取締役が2人以上いる会社では全員で決定しなければならないとされています。

どのような制度であっても取締役会で定めたものであれば問題はありませんが、不祥事の早期発見のためにも、有効な制度を構築したいものです。
そもそも、企業の不祥事の発見が遅れる理由としては、社員全員が認識しているものの誰も言い出せないという集団心理が影響します。
また、一般的には、誰かが不祥事を直近の上司に報告し、その上司がさらなる上席者に報告をするという方法があります。
しかし、報告ルートの間にいる上席者自身が不祥事に関与しているなど、社内だけでの対応に限界がある場合があるようです。

そこで近頃では、内部通報制度を定め、いわば『仕組み』的に企業不祥事の早期発見を実現しようという潮流ができました。


有効視されるのは社外の通報窓口

2016年12月、消費者庁から内部通報ガイドラインが示されたのをきっかけに、内部統制システムの一翼を担う制度として、内部通報制度を採用する企業が急増しました。
内部通報制度とは、要するに、不祥事の報告の際、従前の中間管理職ルートとは異なるルートを設ける制度のことをいいます。
そのルートとしては、社内に通報窓口を設ける方法と、これに加えて法律事務所などの外部に設ける方法があります。

通報者が最も恐れているのは、自らが通報したということが社内の誰かに知られてしまうことです。
通報をしたことにより、反乱分子のような扱いを受けたり、嫌がらせをされたりして、場合によっては退職に追い込まれてしまうのではないか、ということを心配しています。

そのため、社内に通報窓口を設けたとしても、窓口の者も社内の従業員である以上、通報発覚のおそれがあり、窓口が利用されないことが予想されます。
また、仮に通報窓口が利用されたとしても、通報窓口業務は、通報者の氏名等の秘密保持や、通報内容のヒアリング、通報を伝える者の範囲、関係者の調査や証拠化の方法等、緻密かつ繊細な対応が要求されますので、一従業員にとっては、荷が重い問題でもあるのです。

そういったさまざまな懸念から、法律事務所に窓口業務を依頼する会社が増えています。

通報者としても、外部窓口であれば、少なくとも窓口の人間は従業員ではないので、通報の際の心理的なハードルが下がります。
また、実際的にみても、弁護士は事実調査・検討のプロですので、思い違いや伝聞情報に惑わされることなく、的確な情報提供が可能となります。
さらに、外部窓口が存在することによって、通報者に不利益がないことを理解してもらうのが容易になり、窓口利用が促進されることが期待できます。

会社の規模にかかわらず、自社の不祥事が致命的な状態になる前に、内部通報制度について検討してみるのもよいかもしれません。


※本記事の記載内容は、2020年5月現在の法令・情報等に基づいています。