石田勝也税理士事務所

外部業者に委託した制作物の著作権は誰のもの?

20.03.24
ビジネス【企業法務】
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会社が販促物の制作を外部業者に委託するといったことは日常的に行われています。
その際、「納品された物の制作に対する報酬を支払ったのだから、著作権も自分たちのものだ」などと考えていませんか。
そうであれば認識を改める必要があります。
今回は、制作物の著作権は誰のものとなるのかについて、著作権法の基本的な考えを説明します。
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著作権は原則として創作者(受注者)のもの

著作権は、原則としてその著作物を創作した人に帰属します
いわゆる職務著作(著作権法15条)にあたる場合などの例外的な場合はありますが、作成のための費用・報酬を負担しただけで著作物の創作行為に関与等をしていない者が著作権を当然に得るということはありません。
したがって、発注した会社が著作権を得たいのであれば、それは著作者から著作権の譲渡を受けなければなりません。
端的には、発注した会社と外注先の制作者との間の契約書のなかで決めておくべき事項です。


契約書がない場合、著作権譲渡はどうなるのか

とはいえ、実際には、納期等の問題から契約書を作成せずに受発注をしているケースもあるでしょう。
その場合、発注者側が著作権譲渡を受けた、とは言えないのでしょうか。
一般の方は誤解されている場合がありますが、『契約』というのは、契約書を作成しなければ成立しないというものではありません。
契約書は、契約内容を特定するための非常に強力な証拠ですが、契約の具体的内容を示す証拠の一つに過ぎません。
そのため、極端な話をすれば、口頭の合意だけで契約は成立します。
したがって、契約書以外の証拠、たとえばメールのやりとりの内容などで著作権譲渡の合意が認められるのであれば、契約書がない場合でも、著作権が発注者側にあると認められることもありえないことではないのです。
もっとも、契約書が存在しない場合に、契約内容を特定できるだけのそのほかの客観的証拠が整っていることは稀です。
契約書が存在しない場合には、結局、合意内容が客観的に不明確なことが多いため、裁判所は法の原則に沿った判断をする傾向が強いといえます。
すなわち、発注者に対して著作権の譲渡がなされたと判断できるケースは少なく、基本的には、制作者側に著作権があるという前提のもと、発注者側にどのような範囲で制作物の利用許諾がなされたといえるのかを考慮することが多いのです。

著作権について事前の取り決めのない制作物の受発注は、後日、権利帰属についての認識のズレによる紛争に発展することは少なくありません。
そのため、制作物の著作権については、あらかじめ契約書を作成して明確に定めておく必要があります。
しかし、場合によっては、契約書を即時に作成できないことがあるかもしれません。
そうならないためにも、著作権の関係する取引が頻繁にある場合は契約書の雛形をあらかじめ準備しておく必要があるでしょう。
また、普段、著作権の関わる取引が少なく、契約書の雛形の用意まではしていない場合であっても、発注する制作物を長期間利用する可能性があるようなときは、今後の会社の施策にも大きく影響しかねないため、拙速な処理とならないように注意してください。


※本記事の記載内容は、2020年3月現在の法令・情報等に基づいています。