石田勝也税理士事務所

M&Aの方法の一つ『事業譲渡』のメリットとデメリットとは?

20.01.28
ビジネス【企業法務】
dummy
M&Aという言葉を聞いたことがあるかと思います。
直訳すると企業の『合併と買収』という意味ですが、単純に会社または事業を売買するというイメージで考えていただいて差し支えないでしょう。 
M&Aの方法としては、株式を譲渡して会社の権利を譲り渡すというのが代表的ですが、それ以外にもさまざまな方法があります。
今回は、M&Aの方法のなかから『事業譲渡』について説明します。
dummy
事業譲渡の解釈とは?

事業譲渡は、会社のある事業を他社に譲り渡すことであり、会社法や商法にそのために必要な手続や事業譲渡に付随して負う競業避止義務などが定められています。
会社間の取引の対象となる『事業』については、法律上定義がなされていませんが、判例上、『一定の営業目的のために組織化され、有機的一体として機能する財産の全部または重要な一部を譲渡し、これによって譲渡会社がその財産によって営んでいた営業活動の全部または重要な一部を譲受人に受け継がせ、譲渡会社がその譲渡の限度に応じ法律上当然に競業避止義務を負う結果を伴うもの』が事業譲渡であると解釈されています。
要するに、単に個別の事業用財産や権利義務を譲渡することは事業譲渡にはあたりません。
事業譲渡といえるのは、『一体で機能する資産、負債、雇用関係、取引関係等をまとめて譲渡する場合になります。


事業譲渡の特徴とメリットとは?

事業譲渡の定義は、前述の通りですが、結局のところ、具体的なケースでどのような事業を譲渡するのかということについての明確な基準やルールはありません。
したがって、当事者が契約書のなかでその範囲を決めることになります。
当事者が話し合って承継する資産・負債を決めることができるということは、具体的には、譲り受ける会社が必要な部分だけを引き継ぐことができ、引き継ぎたくない事業や負債を除外できるということです。
このように譲渡の対象を柔軟に決定できるのは、大きなメリットといえます。
また、手続も他のスキームよりも簡便であるため、M&Aの方法としては、株式譲渡に次いで、利用しやすい方法であるといえます。


事業譲渡のデメリットとは?

他方、事業譲渡による場合は、次のようなデメリットが考えられます。
まず、資産の所有権、債権・債務、契約等の移転については、個別に名義変更や同意・承諾等の取得手続を行う必要があります。
対象となる資産や顧客、取引先が多数に及ぶ場合は、その手続の数も増えますので、相当の手間・時間・労力がかかります。
また、雇用契約については、売り手側の会社を退職して、買い手側の会社に就職するという手続が必要になり、そのために従業員の個別の同意を取得する必要があります。
そのため、優秀な従業員から同意が得られなかった場合には、その従業員に、買い手の会社で働いてもらえないということになりえます。
さらに、対象事業が、免許や許認可が必要な事業の場合、買い手側がその免許等を承継することは通常できないので、新規に免許・許認可を取得する必要があります。
事前に免許等の取得ができるよう調整が必要であり、これに多くの手間・時間が必要になります。

事業譲渡には以上のような特徴、メリット・デメリットがあります。
M&Aを検討する際には、会社の目的に合った方法を選択するようにしましょう。


※本記事の記載内容は、2020年1月現在の法令・情報等に基づいています。