石田勝也税理士事務所

働き方改革で増加!?『見せかけのホワイト企業』にならないために

19.06.11
ビジネス【労働法】
dummy
『働き方改革関連法』が2019年4月1日より施行されたことにより、労働者の権利拡大に期待が寄せられています。 
その一方で懸念されているのが、表向きは法令を遵守しながらも、裏では違法労働を行う『見せかけのホワイト企業』が増えることです。
今回は、自社が『見せかけのホワイト企業』になってしまうことのデメリット、そして、そうならないための対策を紹介していきます。
dummy
『見せかけのホワイト企業』とは?

サービス残業が常態化し、過労死が多く発生している日本では、ブラック企業問題は根深く、なかなか解決の糸口が見つかりませんでした。

そこで、政府の肝いりで進められたのが、この度の『働き方改革関連法』でした。
改革の目玉の一つが、『時間外労働の上限の厳格化』です。
これまでの労働基準法では、原則1日8時間、週40時間の法定労働時間が定められていますが、労働基準法36条に基づく労使協定、通称『36(サブロク)協定』で定める範囲内であれば、社員に時間外労働をさせることができます。
今回の改正では、この時間外労働と休日労働の限度時間に1カ月45時間などの上限を設け、さらに、これを超えた場合の罰則規定(6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金)を設けました。

また、『年次有給休暇取得の義務化』や『労働時間把握の義務化』『同一労働同一賃金』などが定められ、全体的な労働条件の是正につながることが期待されています。

しかし、その一方で『見せかけのホワイト企業』が増えるのではないかという意見もあります。

『見せかけのホワイト企業』とは、表向きは労働関連法を守っており、休暇の取得や残業の制限を呼びかけているなど、よい職場環境であるように見せかけ、その裏では、法令違反やサービス残業が当たり前の超ブラック企業のことです。
一見そうは見えないだけに、普通のブラック企業よりもタチが悪いかもしれません。

現状、どの企業も人手不足のなかにあって、採用の現場で他社より優位に立つため、労働環境のよさをアピールする必要があります。
今回の法改正で、企業側は労働時間の見直しや従業員の待遇改善を求められますが、それらに対応しているということは、対外的にも大きなアピールポイントになります。
無理やりでもうわべだけを取り繕った結果『見せかけのホワイト企業』が誕生してしまうことは十分に考えられます。


見せかけかどうかの見分け方とは?

パートタイマーや派遣労働者、有期雇用労働者から、正社員との待遇差についての理由を求められたときに、説明する義務が新たに創設されました。
そのため、パートタイマーや派遣労働者の待遇改善を余儀なくされる企業も増えていきそうです。

この説明責任にしっかりと応じることができるかどうかが、『ホワイト企業』か『見せかけのホワイト企業』かを見分けるポイントです。

社内に対しても社外に対しても、『あいまいな待遇の説明』や『わかりにくい表現』は避け、どの従業員に説明を求められても、現在の待遇をきちんと説明でき、納得させるだけの理由を常に持っておくことが必要です。
従業員の待遇や自社の労働環境を明確にし、公開できる企業こそが、真の『ホワイト企業』といえるのではないでしょうか。


『見せかけのホワイト企業』のリスクとは?

『働き方改革関連法』には、『時間外労働の上限の厳格化』だけでなく、『年次有給休暇取得の義務化』も盛り込まれています。『年次有給休暇取得の義務化』では、企業は従業員に、1年以内に5日の年休を取得させるように義務づけられており、これに違反しても罰則の対象になります。

厚生労働省では2017年5月より、労働基準関係法令違反により書類送検された企業の名前を公表しています。いわゆる『ブラック企業』の公表です。
『見せかけのホワイト企業』が『ブラック企業』として世に広まると、企業イメージが大きく傷つくのは必至です。

そうならないためには、『見せかけ』だけではなく経営側が労働法を遵守するという強い意志を持ち、現場の労働環境や労働状況をしっかりと把握しながら、法令違反にならない働き方を推進していく必要があります。
自社にとって最良の選択を見極めていきましょう。


※本記事の記載内容は、2019年6月現在の法令・情報等に基づいています。