石田勝也税理士事務所

被害者と加害者が交通事故の『示談交渉』で注意するポイント

24.07.30
ビジネス【法律豆知識】
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車を運転している人は、誰もが被害者や加害者になる可能性があります。
もし、交通事故に遭ったら、当事者間で過失割合や賠償額などを決めなければいけません。
これらは民事裁判によって決めることもできますが、多くの場合は当事者同士の話し合いによって決定します。
この話し合いのことを『示談交渉』といいます。
示談交渉で合意を得るために必要なポイントや注意点などについて、被害者と加害者それぞれの立場から説明します。

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交通事故の被害者になったらすべきこと

示談交渉で決めるのは主に『過失割合』と『賠償額』と『示談条件』の3つです。
過失割合とは、交通事故の責任が被害者と加害者のそれぞれにどのくらいあるのか明確にする割合のことで、過去の判例を基準に割り出すことができます。
賠償額とは、被害者の損害を補償するための慰謝料や治療費などの額のことで、賠償金を総称して『示談金』とも呼びます。
示談金は過失割合によっても変動します。
たとえば、過失割合が9(加害者)対1(被害者)で、トータルの損害額が100万円であれば、被害者は示談金として90万円を加害者側に請求することができます。
示談条件は、示談金の支払い方法や期限、損害の範囲などのことです。

示談には法的な拘束力があり、一度、示談が成立して合意に至ると、後から撤回したり、再度交渉したりすることがほぼできません。
そのため、被害者と加害者の双方の納得がいくまで、示談交渉を行う必要があります。

もし、交通事故の被害者になってしまったら、警察への通報や安全の確保など、必要な対応を行なってから、加害者の氏名や連絡先を確認しておきましょう。
事故現場の状況や、ナンバーを含む車両をカメラで撮影するなどして、記録しておくことも大切です。

また、事故後は怪我をしていなくても病院に行き、診察を受けておきましょう。
後から痛みなどの症状が出た際に、診察を受けていないと事故との因果関係が証明できなくなってしまいます。
一般的に、2週間を超えて受診した場合は、事故との因果関係が否認される傾向にあるので注意してください。

示談交渉自体を当事者同士で行うことは少なく、被害者の加入している保険会社と加害者の加入している保険会社がある場合には、各保険会社が支払う保険金を確定するため、過失割合等に関して交渉を行うことがほとんどです。
したがって、交通事故に遭ったら、保険会社への連絡も忘れずに行う必要があります。
ただし、もらい事故のように被害者に過失がない場合は、被害者加入の保険会社が支払う保険金がないため、それについて示談交渉を行うことができません。
この場合には、被害者は自身で行うか、弁護士に依頼して、加害者側の保険会社と示談交渉をしなければいけません。
相手の保険会社が提示してくる示談金は、基準よりも低額になるケースが多く、増額にも簡単には応じてくれません。
示談交渉がこじれそうであれば、交通事故の分野に詳しい弁護士をはじめとする専門家に依頼するのも方法の一つです。

任意保険未加入の大きなリスク

交通事故を起こした加害者となった場合にも、任意保険に加入していれば、保険会社が窓口となって被害者との示談交渉を行なってくれます。
保険会社は事故の状況などから作成した示談案をもとに、被害者と交渉します。
被害者との示談交渉は原則として電話やメールなどでやり取りするため、被害者と加害者と保険会社が一堂に会することはほとんどありません。
誠意を示すため、被害者に直接連絡して謝罪する方法もあるかもしれませんが、示談の内容については保険会社を通すようにしましょう。
そして、被害者が示談案に納得すれば、示談が成立します。

交通事故で注意したいのは、加害者自身が任意保険に未加入の場合です。
未加入だと、自賠責で支払いきれない分の損害額は加害者が支払わなければいけませんし、被害者との示談交渉も加害者みずからが行わなければいけません。

もちろん、保険会社に頼らず、個人で示談交渉を行うことも不可能ではありませんが、通常よりも高額な金額で示談に至ってしまったり、示談の条件が法律に抵触するようなものになってしまったりと、リスクが跳ね上がる可能性があります。

また、任意保険に加入していたとしても、保険会社と示談交渉の代行を契約していなかったり、起こした事故が保険の適用外だったりする場合も、自身で示談交渉を行う必要があります。
さらに、大きな事故では、任意保険の保障額を上回る可能性があり、保険会社では示談交渉に対応できないことも考えられます。

保険会社が対応してくれるのはあくまで民事の範囲に限られるため、刑事責任を問われている場合は弁護士のサポートが必要になる可能性があります。
もし、みずから示談交渉を行わなければならない状況に陥ったら、まずは弁護士などの専門家に相談しましょう。


※本記事の記載内容は、2024年7月現在の法令・情報等に基づいています。