税理士・社労士・FP君和田昭一事務所

静かなことが価値になる?『クワイエット』ブームを分析

25.07.29
ビジネス【マーケティング】
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さまざまな領域や分野において、多種多様なトレンドが生まれるなか、最近注目を集めているのが、静かさや控えめ、落ち着きなどに重きを置く「クワイエット」ブームと呼べる現象です。
このブームは、ファッションやインテリア、ライフスタイルの領域にまで広がっており、社会の価値観に変化をもたらしています。
なぜ今、クワイエットが新たな潮流となっているのでしょうか。
ブームの理由やクワイエットを意識したマーケティング戦略の重要性などについて、解説します。

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さまざまな分野で注目を集める「クワイエット」

近年、さまざまな分野で「Quiet(静かな)」を評価するトレンドが広がりを見せています。
代表的なのが、ファッションやインテリアの世界で人気を集める「クワイエット・ラグジュアリー」です。
ロゴや派手な装飾を排し、上質な素材や仕立てのよさで勝負する、控えめながらも本物の価値を追求するクワイエット・ラグジュアリーは、一見すると地味に見えるかもしれませんが、その奥には洗練された美意識と、本質的な豊かさが隠れています。

クワイエット・ラグジュアリーはファッションだけではなく、インテリアの分野でも注目を集めており、クワイエットを軸にした家具は、大理石や無垢材、ブロンズや真鍮といった本物の素材が使われています。
また、ファッションと同じく、カラーもベージュやウォームグレー、クリームなど落ち着いた色調が主流となっています。
ファッションやインテリアにおけるクワイエット・ラグジュアリーは2024年のトレンドでしたが、2025年も引き続き、ブームは続いていくものとみられています。

また、クワイエットブームは、若者のライフスタイルにも波及しました。
Z世代のトレンドといわれる「クワイエット・アゲ」は、派手な自己主張をせず、自分だけの楽しみや、心を満たす体験を静かに追求するライフスタイルです。
たとえば、自宅で丁寧に淹れたコーヒーを味わう、お気に入りの音楽を聴きながら読書に没頭するなど、誰かに見せるためではなく、自分自身の「気分をアゲる」ことに重きを置いています。
SNSでの「いいね」や「フォロワー数」に振り回されるのではなく、内面的な充実感を求める傾向が強まっているといえるでしょう。

さらに、大人の休暇の過ごし方として、「カームケーション」という言葉も注目を集めています。
カームケーションは、「Calm(穏やかさ・静けさ)」と「Vacation(休暇)」を組み合わせた造語で、心と体を落ち着かせることを目的とした、静かでリラックスした休暇の過ごし方を指します。
都市の喧騒を離れて自然豊かな場所や静かなリゾート地で過ごしたり、スマホやPCの使用を控えて何もしない時間を楽しんだりすることが、代表的なカームケーションの過ごし方といえます。

商品やサービスの本質的な価値を伝える

「クワイエット(静かさ)」や「カーム(落ち着き)」を冠するトレンドは、2016年頃に若い世代を中心にトレンドとなった「チル(ゆったり、リラックス)」にも通じます。
これらのトレンドは、表面的な華やかさや派手さよりも、内面的な豊かさ、本質的な価値、そして、精神的な平穏を求める現代人の心の状態を映し出しています。

スマートフォンやSNSの普及により、現代人は常に大量の情報にさらされています。
ニュースや友人の投稿、広告などが絶え間なく供給され続ける情報は、ときに精神的な疲弊をもたらします。
同時に、SNSなどで情報を発信する側も、他人からの評価を気にし、無理に自分を飾ったり、見栄を張ったりすることに疲れてしまう人が少なくありません。
そこで、あえて情報から距離を置き、他人の目を気にせず、自分自身の内なる満足感を優先する「クワイエット」な生き方が、解放感をもたらしていると考えられます。

こうした本質的な価値への回帰は、今後も続いていくとみられています。
営業活動やマーケティング施策においても、顧客の内面に深く寄り添い、本質的な価値や心の豊かさ、精神的な平穏の提供に焦点を当てることが重要になっていくはずです。
たとえば、アパレルであれば、高級素材の品質や熟練職人の手作業による縫製の美しさなど、目に見えない部分や細かいこだわりが重要になります。
デジタル製品であれば、シンプルで直感的な操作性やユーザーの集中力を妨げないデザイン、「思考を邪魔しない」といった体験価値を訴求するのも効果的でしょう。
広告表現においても、過度な装飾や刺激的な言葉を避け、静かで洗練されたトーンでメッセージを伝えることが求められます。

クワイエットを意識したマーケティングとは、単に商品やサービス、広告を地味にすることではありません。
商品やサービスの本質的な価値をアピールして、顧客に提供することが多くの企業に求められており、これからの営業活動やマーケティング施策の軸になっていくのではないでしょうか。


※本記事の記載内容は、2025年7月現在の法令・情報等に基づいています。