高木淳公認会計士事務所 / SAO税理士法人 蒲田オフィス

有利な条件を引き出すための『交渉テクニック』

24.12.24
ビジネス【マーケティング】
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マーケティングや営業の担当者は、取引先と交渉を行うことが少なくありません。
契約内容や価格などの各種条件は交渉によって決められますし、ケースによってはプロジェクトの成否が交渉で左右されてしまうこともあります。
マーケターや営業の必須スキルといえる交渉力を身につけるにはどうしたらよいのでしょうか。
大切なのは交渉テクニックを覚え、実践のなかで自分のものにしていくことです。
相手から有利な条件を引き出すための交渉テクニックを紹介します。

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思わず受け入れてしまう心理的なテクニック

交渉とは、異なる立場の者がお互いの要求を主張しながら、合意の到達点を探るプロセスのことです。
交渉はあくまでビジネスのためのツールでしかありません。
相手を論破するのが目的ではなく、お互いが納得できる条件で合意に至ることが目的です。
したがって、どんな交渉でも高圧的な態度や相手を見下した言動は絶対にNGです。
お互いがWin-Winのよい関係性を築くためにも、交渉の際は感情的にならず、常に誠実な姿勢で対応しましょう。

交渉に秀でている人は、相手に最大限の配慮をしながら、交渉テクニックを織り交ぜて、着地点を探っていきます。
たとえば、基本的な交渉テクニックに「ドアインザフェイス」というものがあります。
ドアインザフェイスは、相手から何かしてもらったら同じようにお返ししたいと感じる「返報性の原理」を応用したもので、最初に過大な要求をし断られた後に、それよりも受け入れやすい要求を行うテクニックです。
相手は一度断った引け目から、小さな要求であれば、受け入れる可能性が高くなります。

逆に、最初に小さな要求を受け入れてもらい、そのままの流れで、本命の大きい要求も受け入れてもらう「フットインザドア」という、一度受け入れたものは断りづらいという人の心理を利用したテクニックもあります。
状況に応じ、ドアインザフェイスとうまく使い分けていきましょう。

また、交渉の際にメリットばかりを伝えて、自社に都合の悪いデメリットを伝えていないというケースがあります。
前述した通り、交渉は誠実さが重要です。
メリットだけではなく、あえてデメリットも伝える「両面提示」は、比較検討したい相手に有効で、自身の誠実さを伝えることもできるテクニックです。
デメリットを包み隠さず伝えることで、クレームの予防にもなり、相手の信頼を獲得することができるでしょう。

危険なテクニックと誰でも使えるテクニック

交渉テクニックのなかでも、扱いがむずかしいのが「ローボールテクニック」です。
ローボールテクニックは、たとえば、すでに合意を得ていた単価100円を後から110円にしてもらうといったように、相手が断りにくい状況にして、後から本来受け入れてもらいたい条件を示す交渉テクニックのことです。
相手は一度受け入れてしまった手前、変更後の条件も受け入れざるを得ません。

ただし、ローボールテクニックは、使い所を見誤ると相手からの信頼を失ってしまう可能性があります。
信頼関係のある友人同士や身内同士などの交渉であれば通用するかもしれませんが、ビジネスにおいては使用する場面を慎重に見極めましょう。

ほかにも、表現方法や提示方法を変えて相手の印象を変える「フレーミング」や、最初に情報や数字などの基準を提示して相手の印象を変える「アンカリング」などのテクニックもあります。
ただし、いずれも交渉を得意とする上級者が使用するもので、あまり慣れていない初心者が多用すると交渉がうまくいかないことがあるので注意してください。

交渉で効果的なのは、「ヒアリング」や「保留」といった、初めての人でも使いやすい一般的な交渉テクニックです。
まずは話に耳を傾けるヒアリングで、相手の本心を探りながら、不確定な要素を消していきます。
「その条件ではむずかしい」と言われた場合でも、価格がむずかしいのか、納期がむずかしいのか、「むずかしい」要因をはっきりと聞き出し、代替案を提案できるのがベストです。
そのためには、相手の話をよく聞く能力が不可欠です。

また、条件によっては、その場で即答できないことも出てきます。
相手から条件が提示されると思わず答えたくなってしまいますが、交渉には熟考する時間が必要なこともあります。
明言を避けて、「一度、社に持ち帰らせていただきます」などと保留することも時には大切です。

交渉は、交渉することが決まった段階から始まっているともいわれます。
相手について、どれだけ調べて、準備を行なってきたかが合意を得るうえでの重要なポイントになります。
入念に下調べをしておくことで、相手に納得感を与える提案もできるはずです。
また、事前に複数のパターンを想定したシミュレーションをしておくと、いざというときも安心です。
事前準備とシミュレーションを行い、実際の場面をイメージしておくことが交渉を成功に導く秘訣です。


※本記事の記載内容は、2024年12月現在の法令・情報等に基づいています。