高木淳公認会計士事務所 / SAO税理士法人 蒲田オフィス

企業文化を決定づける『コアバリュー』の作り方

24.12.24
ビジネス【人的資源】
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経営者は会社を運営していくために、組織の方向性を示さなければいけません。
その方向性を示す際に大切なのが「コアバリュー」です。
コアバリューとは、従業員に共有したい組織の重要な価値観のことで、意思決定や事業活動における基準の一つにもなります。
そして、コアバリューを定めることで、その企業ならではの企業文化が形作られていきます。
経営者であれば覚えておきたい、コアバリューのメリットや決定のプロセスについて解説します。

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コアバリューを全従業員に共有する利点

企業はそれぞれが独自の価値観に基づいて経営を行なっていますが、その価値観を明確に示したものがコアバリューです。
コアバリューを定めて、すべての従業員に共有することで、組織としての方針や意思が統一され、統制のとれた事業活動が行えるようになります。

通常、人は年齢や経験を重ねることで誰もが自分なりの価値観を得ていきますが、組織の一員として仕事をするうえで、個人の価値観に基づいて行動していたのでは、言動や判断にブレが生じてしまいます。

また、人は普段から自分の価値観をしっかりと認識しているわけではありません。
仕事のなかで咄嗟の決断が求められる場面や、他者と交渉しなければならないシーンなどでは、自分の価値観に則った判断ができず、最初に考えていたものとは相反する結論にたどり着いてしまうこともあります。
会社に所属する従業員として働いてもらうためには、会社側がコアバリューとして価値観を示し、どのような場面でも企業の価値観を認識したうえで、その価値観に基づいた行動をしてもらう必要があります。

組織の価値観は、個人の価値観のように自然に醸成されていくものではなく、経営者など組織の舵を取る人間が明確に定めて、意図的に浸透させていくものです。
特に重要な価値観をコアバリューとして定めて共有するからこそ、すべての従業員が一貫した活動をできるようになります。

また、コアバリューがしっかりと共有されていれば、従業員が個別に判断して動けるようにもなります。
コアバリューを把握している従業員は、会社の価値観にそぐわない言動を行いません。
従業員一人ひとりが適切に判断できれば、上司からの指示をあおがなくてもよく、業務の効率化にもつながります。

組織内で価値観が統一されているため、業務上の判断を巡って衝突が起きにくくなりますし、意見が食い違うことも少なくなります。
価値観が明確に示されているため、採用の場面でも自社にマッチする人材を探しやすく、価値観が合わない人を雇用するミスマッチを防ぐことが可能です。

コアバリューによって示された価値観に共鳴する人が集まるということは、その企業ならではの企業文化が醸成されるということです。
自然発生的に企業文化が形作られるケースもありますが、コアバリューを定めることで、意図した企業文化を作り上げられるようになります。

企業理念の違いとコアバリューの作り方

企業の価値観を示すものとして、「企業理念」があります。
コアバリューとよく似た概念ですが、企業理念は長期的なビジョンやミッションなどのことを指し、外部に向けて宣言するものです。
対して、コアバリューは「おもてなしの心」や「チャレンジ精神」、「創意工夫」や「チームワーク」など、社内の従業員に向けた行動指針といえるでしょう。

コアバリューを定めるためには、組織の創業者や経営者が会社を創設した目的を振り返ったり、将来的な展望などを考えたりしながら、たたき台となる原案を作成します。
コアバリューは従業員の行動の基準になるものなので、数があまり多過ぎると、覚えられないでしょう。
原案を作る際は、多くても10個程度にしておきましょう。

原案には「こういう組織にしたい」という経営者の思いが込められていますが、それがそのままコアバリューになるわけではありません。
コアバリューはすべての従業員に共有するものであり、賛同してもらうものです。
経営者から押し付けられたコアバリューでは意味がありません。
原案を従業員に提示して、できるだけ多くの意見を募り、必要であれば修正を加えていきます。

そして、最終的に完成したコアバリューをすべての従業員に周知します。
一斉メールや全体ミーティングなどで経営者が繰り返し、コアバリューを示していくことが大切です。

コアバリューはその企業の価値観を示し、企業文化を形作るものです。
もし、まだコアバリューを定めていないのであれば、自分や会社がどのような価値観に基づいて動いているのか、考えるところから始めてみましょう。


※本記事の記載内容は、2024年12月現在の法令・情報等に基づいています。