高木淳公認会計士事務所 / SAO税理士法人 蒲田オフィス

路上ライブは違法? 事前に行うべき手続を解説

24.12.24
ビジネス【法律豆知識】
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繁華街や駅前で路上ライブを行うミュージシャンの姿は、すっかり当たり前のものになりました。
誰もが知る有名ミュージシャンで、過去に路上ライブを行なっていたという人も多く、ある種の登竜門となっています。
しかし、路上ライブを行うにあたっては、適切な手続を取らないと、思わぬトラブルを招くことになりかねません。
今回は、無許可での路上ライブ実施の是非、そしてトラブルを避けるための手続について説明します。

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無許可の場合は逮捕される可能性も?

2024年10月、ガールズユニットが5月に新宿で違法に路上ライブを行なった疑いで書類送検されていたというニュースが報道されました。
あまり知られていませんが、実は、路上ライブを無許可で行うと違法行為となる可能性があります。
道路交通法第77条第1項は、道路の使用にあたっては「管轄する警察署長の許可を受けなければならない」と定めています。
そのため、無許可で路上ライブを行う行為は、道路交通法違反に該当します。
ただし、現実問題、無許可で路上ライブを行なったとして、その場で逮捕される可能性は低いと考えられます。
通常であれば、悪質性が低いと判断され、警察官がやってきても注意を受け、解散させられる程度で済まされることがほとんどでしょう。
その場で警察官の指示に従い、演奏を注意すれば、逮捕されることはまずないと思われます。
先のガールズユニットの場合は、通行人の妨げや組織性が認められたことから、影響が大きいと判断されたために書類送検に至ったといわれています。

もちろん、許可を取る必要があることを知っていたにもかかわらず、それを無視して路上ライブを行うことは問題です。
しかし、路上ライブを行うにあたっては道路使用許可が必要なことを知らない人も多いため、上記のように指示される程度の対応になることがほとんどです。
注意が必要なのは、警察官から中止を求められた際の対応です。
警察からの制止を無視して大音量での演奏を続けた場合、軽犯罪法違反に該当する可能性が高くなります。
同法第1条14号では、「公務員の制止をきかずに、人声、楽器、ラジオなどの音を異常に大きく出して静穏を害し近隣に迷惑をかけた者」が処分の対象になると定められているため、場合によっては拘留や科料といった処罰を受けることもあり得ます。

では、どうすれば、合法的に路上ライブを開催できるのでしょうか?
カギとなるのは「道路使用許可」の取得です。
道路使用許可を所得するためには、路上ライブを実施する予定の場所を管轄する警察署で申請手続を行う必要があります。
許可を得るためには、一定の条件があるため、まずは管轄の警察署に相談することをおすすめします。
また、ライブを行う場所が道路ではなく、商店街などといった私有地の場合もあるかもしれません。
その場合は警察署ではなく、実施する場所の管理者からの許可が必要です。
許可がないままに路上ライブを行うと、法律違反になる場合があるだけでなく、近隣とのトラブルを招く可能性もあるため、必ず事前に確認するようにしておきましょう。

道路使用許可の申請が必要なのはどんなとき

路上ライブに限らず、普段の生活のなかでも道路使用許可の申請が必要なケースがあります。
最も身近な例としては、引っ越し作業でしょう。
トラックを路上に停め、大型の家具を運び出すような大掛かりな作業を行う場合は、道路使用許可が必要となります。
これは道路交通法上、「道路において工事もしくは作業をしようとする」行為に該当するためです。
引っ越し業者に依頼する場合は業者が手続を行いますが、自力で引っ越しを行う場合は自身で許可を取得する必要があります。

また、街頭でのチラシやティッシュの配布、商品サンプリングといったプロモーション活動も、各都道府県の道路交通規則などの定めにより許可が必要とされる場合があります。
これらは企業の販促活動でよく見かけるものですが、適切な許可なく行なった場合は違法となる場合がありますので注意しましょう。
同様に、選挙活動での街宣車の使用や、テレビ番組やCMの撮影についても許可申請が必要です。

ほかにも、商業活動にあたって、許可申請が必要なケースも存在します。
たとえば、道路上に看板やのぼり旗を設置する場合は「道路に工作物を設けようとする」行為として許可が必要です。
また、祭りやイベントでの露店の出店、移動販売車による営業なども「場所を移動しないで、道路に露店、屋台……を出そうとする」行為に該当し、申請が求められます。
ただし、これらの活動は許可さえ得られれば自由に行えるというわけではありません。
許可を得た後も、以下のような点に注意を払う必要があります。
・歩行者や車両の通行の妨げにならないこと
・周辺の生活環境や営業活動に配慮すること(音量調節など)
・警察官から指導を受けた場合は速やかに従うこと

また、たとえ許可を得ている活動でも、その時々の状況によって制限が必要になることがあります。
警察官からの指示に従わない場合、許可が取り消されたり、場合によっては処分が科されたりする可能性もあります。
これらの行政的な手続は、一見すると面倒に思えるかもしれませんが、誰もが気持ちよく公共空間を利用できるようにするための仕組みです。
事前に適切な手続きを経ることで、より安心して活動に打ち込むことができます。
ルールに基づいた適切な利用を心掛けるようにしましょう。


※本記事の記載内容は、2024年12月現在の法令・情報等に基づいています。